「スキャンダラス−彼が若さを手放す時−」椎名時生の成功
時生のもらった大役というのは、話題性が充分だった。つまり、有名俳優がネット上の問題発言で降板させられたからだ。深夜のドラマとはいえ、その俳優の降板後を引き継いだ無名の新人。それだけで好奇の対象だった。ネットにはアンチ発言や有名俳優の擁護発言が続いた。時生はぼんやりと思いだしていた。初めての打ち合わせでの局の会議室。初めて会うはずのプロデューサーの顔は、先日勝山先生が連れてきた「知らない男」だった。
プロデューサーと寝て、役をもらう?女性週刊誌みたいだ。と疲れたように笑った。初めて勝山先生がわからなくなった。次に会った時、問い詰めた。理不尽を言っているとわかっていてもひとしきり時生が感情を爆発させると、「君の夢はなんだ」と勝山先生が訊いた。わたしは君の美貌を守り、仕事を与え、自信を持たせるために君の美を自由にさせてもらっている。金こそ払っているが形式上だ。君は今にそれ以上稼ぐようになる。演技を磨いて身体を作って、オーディションを受ける。それだけで勝ち上がって行けるほど芸能界は美しい世界か?君たちは脚をつるされて売られている牛肉と同じだ。一番状態のいいものが買われるだけだ。状態がいいかどうかは味見してみなければわからない。そうだろう?君は味が良かったんだよ。
そのあと、初めて時生は勝山先生を自分から求めた。対面座位をとり、自分の中に勝山先生をうずめるとき、まともなセックスは初めての時以来だったことに気がついた。時生は今度は勃たなかった。あくまでも彼がヘテロセクシャルであることを証明していた。ゼリーを塗った内側は勝山先生の太さでいっぱいに満たされあまりにも幸福だったにも関わらず。「時生、君は美しい。君の歯はわたしの芸術品で、君の髪はわたしの友人が切っている。10日に一度はカットしないと保てない美しい髪だ。
唇も完璧だ。耳も指も性愛の対象になる私と違って、君はわたしを愛せない。だから君には失墜してもらっては困るんだよ。堕ちた美しさはもうそれだけで価値はない。」言われていることがよくわかるだけに、泣けてきて止まらなかった。嗚咽しながら先生の腹に当たる性器が少しずつ勃起するのがわかった。親愛だけでもエクスタシーに達することがわかった時生は勝山先生に父親のような慕情を抱いていたことに気づき始めていた。